JaSST'15東北:基調講演

2015.5.29 仙台でソフトウェアテストシンポジウム2015東北が開催され、基調講演をしてきました。

お題は「現在のレビューに必要な次の一手を把握する レビュー実践ウォークスルー」で110分間。

通常この手の基調講演は、ピーンと張り詰めた空気の中で行われますが、今回は基調講演の直前に会場の受講者のみなさんが”レビューの現状”などをワイワイ議論してからの開始となりました。

そのおかげで、受講者のみなさんの顔が緩くほころんでいる中でリラックスしながら進めることができました。

# JaSST東北実行委員会のみなさん、ありがとうございます!

 

準備したのは(110分で)140枚以上のスライド。実施する前から「それはボリューム的に無理でしょ」とわかる内容でした。

しかし、多くの構成要素を持つ「レビュー」の計画・準備・実施・評価判定・ふりかえり」を事例つきで、かつその過程を受講者と一緒に練り歩き(ウォークスルー)、解説するために、スライドを減らすことなく展開することにしました。

その分、すべての要素を均一に説明するのではなく、事前アンケートで収集した「レビューの困り事」の構造分析結果から”3つのポイント”に絞り込んで深く(以外のところは簡単に)説明することでメリハリをつけたわけです。


# 受講者事前アンケート分析結果は、当日のみスライド+解説でお知らせしました。


今回選択した”3つのポイント”とは、以下のものです。

①開始基準

②目的・観点設定

③効果を実感      

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①は「レビューする価値のある対象のみをレビューする」ためのものです。

これまで多くの組織やチームのレビューを見てきましたが、レビューパフォーマンスの悪い組織・チームほど、開始基準がない/曖昧、または実効性のない内容になっていました。

また、今回の受講者アンケート結果からも、この内容に起因する問題を抱えている方たちが多かったため、ポイントの1つに取り上げました。

 

開始基準とは、レビューに必要な情報やレビュー対象物の質、そして依頼者の考えが取り揃わない限り、多くの工数を費やすレビューを実施しない、ということです。

これが実現できないと、誤字・脱字・衍字(余計な文字)のような軽微な指摘事項に時間を費やすことになるため、工数をたくさん使うわりに有効な欠陥が検出できない、という罠に陥りやすくなります。


②目的・観点

有効な欠陥を指摘できない、というコメントもどこに行ってもかならず出てくるものです。

その背景には「有効なレビュー目的・観点が設定できていない」があります。

一度に一つのことしかできない、アンテナを立てないと欲しいものをキャッチできないのが人間ですから、どのような視点で確認するのかを事前に認識することが必要だ、というのが目的・観点の意図です。

今回は観点を整理、体系化することでレビュー目的も明確化する方法について、一部ワークを交えてお知らせしました。


③効果を実感

レビューパフォーマンスが向上しない原因の一つに、関係するメンバーがレビューの効果を実感していない(だから次のレビューもイヤイヤやる)、というのがあります。

レビューをどうやって評価するとよいのかがわからない、評価方法はあるが面倒な内容で、かつメンバーが効果を実感できるものではない、などがその要因となっています。

今回は、レビュー終了時にすぐレビューの効果をアナログ的に表にプロットする簡易な評価する方法と、その内容に基づき(これもレビュー終了直後に行う)ふりかえりにつなげる意味と事例をお知らせしました。

この評価方法だと、メンバーがレビューの効果を自ら評価し、実感できると思います。

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基調講演なんてそうそう依頼されることはないので(笑)「自分流を貫いて楽しむ」ことを目標に取り組みました。

受講者他のみなさんから「楽しかった!」というコメントのほかに、「盛りだくさんすぎる」などのコメントもいただきましたが、レビュー全体のことをまとめている情報源は少ないことから、あえて「全部のせ」をやった、ということを付記しておきます。

 

今回初めて基調講演というものを経験しましたが、自分の伝えたいことは最低限何とか伝えることができたかなと思います。

そして、自分自身がとても楽しんで進めることができました。

これも、目を輝かせて受講いただいたみなさん、そしてたくさんの準備に加え、場をあたためてからバトンを渡してくれたJaSST東北実行委員会のみなさんのおかげです。 

本当にありがとうございました。



PS1:受講に来てくれたmiwaさんに「あだちさんに、基調講演のスライドのレビューはどんな観点でやったのか聞いてみたい♡」とつぶやかれました。(笑)

今回最も大事にしたことの1つは「レビューの最初から最後までを通過したとわかる内容にすること」です。

そしてもう一つの大事なことは「作者が納得する内容であること」です。

その結果が140スライドを超えた・・・多すぎですが、上記の2点を守れていたのでそのままとしました。(笑)