利用時の品質(その5:リスク回避性)

リスク回避性は、以前のバージョンでは存在しなかった新しい特性のようにも見えますが、「安全性」を包含して拡張したもののようです。

定義は「製品やシステムが経済的状況、生活、健康、環境への潜在的リスクを軽減する度合」となっています。


利用者が持っている課題や問題を製品やシステムが解決する(有効性)だけではなく、その利用時に思わぬ別の問題が発生することを避ける度合い、ということですかね。


例えば、商品購入サイトを利用すると、自分がいるロケーションで欲しいモノが簡単に購入できる(=有効性)のだけれども、時々多めに金額がとられてしまうとか、購入してもいないものの支払いが割り付けられる、あるいは個人情報が流出して変なメールや書簡が届くようになる、、、なんて勘弁してほしいですよね。

また、放射線治療システムのバグにより、患者さんに予定の数十倍の放射線を浴びせてしまったり、狙った患部と異なる場所に照射してしまうような事故が起きたのをTVのニュースで見たことがあります。

さらに別の例では、石油精製プラントを制御するシステムで、精製過程で発生するガス(人間の健康に影響を与えるもの)の排気コントロール機能の誤作動で規制レベルを大幅に超える大量のガスを排出してしまう・・・周囲の住民の健康や地球環境上、大きな問題になりえます。


システム・ソフトウェアの利用によりこのような意図しない不利益を被る可能性がどのくらい低いのかを取扱います。


※余談ですが、一般的にリスクマネジメントでは、リスクへの対策に「回避」「軽減」「移転」「保有」を挙げていますが、リスク回避性では”軽減”を扱っています。


副特性には以下のものが挙がっています。

①経済リスクの危険性

②健康安全リスクの危険性

③環境リスクの危険性


どれも人間の生活に影響を与えるものが並んでいますね。

先ほどの例を①②③の危険性と合わせてみると


時々多めに金額がとられてしまう = 経済リスク

購入してもいないものの支払いが割り付けられる = 経済リスク

個人情報が流出して変なメールや書簡が届くようになる = 健康安全リスク

予定の数十倍の放射線を浴びせてしまう = 健康安全リスク

狙った患部と異なる場所に放射線を照射してしまう = 健康安全リスク

規制レベルを大幅に超える大量のガスを排出してしまう = 健康安全リスク+環境リスク


というような感じです。

ではこの後の更新ではこれらの危険性を一つずつ見ていくことにしましょう。