TMMi(Test Maturity Model Integration)その1

TMMi Foundationという組織が提供しているテストプロセス改善のモデルです。

 

■基本情報

情報はここにあります。

 

 http://www.tmmi.org/

 http://www.tmmi.org/pdf/TMMi.Framework.pdf

 

■ISTQB用語・シラバス内容がベース

このモデルで使用されている用語は、ISTQB用語やシラバスのそれがベースになっています。

(全ての用語を精査したわけではないので”すべて”と言い切れるほどの確信はありませんが)

ISTQBテスト技術者資格をお持ちの方は、とても読みやすい、わかりやすい内容だと思います。

 

■CMMIのモデルフレームで記述

TMMiはCMMIのモデルフレームをそのまま活用しています。

(参考)CMMI日本語版はこちらです。


記述構造はこのようになっています。

 

成熟度レベル(1~5)→ プロセスエリア(目的 - 導入説明 - 範囲) 

          → 固有ゴール&固有プラクティス + 共通ゴール&共通プラクティス

 

1~5の成熟度レベル(例:成熟度レベル2)があり、レベル2~5のそれぞれに複数のプロセスエリア(例:成熟度レベル2-プロセスエリア1:テスト方針・戦略 プロセスエリア2:テスト計画・・・)が割り付けられています。

そしてそれぞれのプロセスエリアに特徴的なゴール(固有ゴール)と実践事項(固有プラクティス)、共通的なゴール(共通ゴール)と実践事項(共通プラクティス)が提供されています。

 

また、CMMIのどのプロセスエリアをTMMiがサポートしているかの情報も付記されていますので、CMMIに慣れている方は読み解きやすく、またCMMIではテストプロセスを詳細に把握することが難しいので、TMMiを併用することでその弱点を埋めてくれることになると思います。

 

段階表現と連続表現

CMMIには段階表現と連続表現があります。

 

 

段階表現とは、混乱しているならまずは成熟度レベル2に位置付けてあるプロセス群から改善してごらんよ。次にそれらができるようになったら成熟度レベル3のプロセス群に取り組み・・・・・というようにプロセス全体の中の改善優先度を「成熟度レベル」として段階的に提示しているものです。

 

一方、連続表現とは、プロセス全体の改善優先度を提示せずにプロセスの一つひとつに対して能力レベル1~5(レベル0は不完全な実施)を付与しているものです。プロセス全体の成熟度ではなく、個々のプロセスとしてはどのような段階を経て改善を進めるのが良いかを「能力レベル」として提示しています。

 

 

現在TMMiは左図のような段階表現となっています。

 

段階表現の良いところは、対象プロセス全体に対する改善の段階がわかりやすいことです。その一方で、画一的に示された内容でもあるため、示された段階毎のプロセスエリアが対象組織に必ずしも合わない場合は使いにくくなることもある、個々のプロセス(例えば、テスト計測)の詳細な改善の道筋がつかみにくい(レベル4になって初めてテストを計測するわけではなく、初期レベル・管理されたレベル・定義されたレベルごとに、そのレベルに相応しいテスト計測があるはずだが示されていない)などのウイークポイントがあります。

 

■固有ゴール&プラクティスと共通ゴール&プラクティス

それぞれのプロセスエリアには、固有ゴール&プラクティスと共通ゴール&プラクティスがあります。

「固有ゴール&プラクティス」とは、そのプロセスエリアに特徴的なゴールとプラクティスです。

例えば、成熟度レベル2-プロセスエリア(Process Area=PA)2の「テスト計画(以降、PA2.2 テスト計画と記載します)」では以下のような固有ゴール(Specific Goal=SG)&プラクティス(Specific Practice=SP)が定義されています。

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SG 1 製品リスク評価の実施
 SP 1.1 製品リスク分類とパラメータの定義
 SP 1.2 製品リスクの識別
 SP 1.3 製品リスクの分析
SG 2 テストアプローチの確立
 SP 2.1 テストすべき項目と特徴の識別
 SP 2.2 テストアプローチの定義
 SP 2.3 開始基準の定義
 SP 2.4 終了基準の定義
 SP 2.5 中断・再開基準の定義
SG 3 テスト見積の確立
 SP 3.1 上位レベルWBSの確立
 SP 3.2 テストライフサイクルの定義
 SP 3.3 テスト工数とコスト見積の決定
SG 4 テスト計画立案
 SP 4.1 テストスケジュールの確立
 SP 4.2 テスト要員の計画
 SP 4.3 利害関係者関与の計画
 SP 4.4 テスト製品リスクの識別
 SP 4.5 テスト計画の確立
SG 5 テスト計画へのコミットメント獲得
 SP 5.1 テスト計画のレビュー
 SP 5.2 作業とリソースレベルの調整
 SP 5.3 テスト計画へのコミット獲得

※SG-SPの意味=SGを達成するためにSPが存在している

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どれもが「テスト計画」に特徴的な内容であることがわかりますね。

 

一方、「共通ゴール&プラクティス」は、どのプロセスエリアであっても共通的に求められるゴールとプラクティスです。

PA2.2 テスト計画に定義されている共通ゴール(Generic Goal=GG)&プラクティス(Generic Practice=GP)は以下の内容です。

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GG 2 管理されたプロセスの制度化
 GP 2.1 組織的方針の確立
 GP 2.2 プロセスの計画
 GP 2.3 リソースの提供
 GP 2.4 責務の割り当て
 GP 2.5 要員の訓練
 GP 2.6 構成を管理する
 GP 2.7 関係する利害関係者の特定と関与
 GP 2.8 プロセスの監視と制御
 GP 2.9 客観的な遵守評価
 GP 2.10 上級管理者との状態レビュー

GG 3 定義されたプロセスの制度化(TMMi level 3の適用のみ)
 GP 3.1 定義されたプロセスの確立
 GP 3.2 改善情報の収集

※GG=GPの意味=GGを達成するためにGPが存在している

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この内容はプロセスエリアに特化したものではなく、共通的に求められる事項です。

例えば、「テスト計画」を(管理されたプロセスとして)制度化することを「GG2」として求めています。

そしてその達成には、テスト計画を実施するためのリソースの提供(GP 2.3 )やテスト計画を立案できる要員の訓練(GP2.5)が必要になるということですが、これらは「PA2.3 テスト監視・コントロール」であっても「PA2.4 テスト設計・実行」であっても同じです。

 

※それぞれのプロセスエリアが関係する成熟度レベルにより割り当たるGG-GPが多少変化しますので注意してください。

 

■情報が詳細

記載されている内容は、成熟度レベル(1~5)→ プロセスエリア(目的 - 導入説明 - 範囲) → 固有ゴール&固有プラクティス + 共通ゴール&共通プラクティス、そしてさらにその下には サブプラクティスや事例が示されているのでモデルの意味を理解しやすく、また実務や成果物と比較する際に判断しやすくなっています。

 

一方で、詳細に書かれているからこそ、文書として分厚くなり、全体を捉えるのが難しくなりがちです。

この罠にハマると、現状評価が膨大な工数と期間になってしまったり、個々の詳細記述に合わせるだけの形式的なアプローチになる、あるいは全体状況の意味を理解できないまま改善を進めてしまう(その結果、何を目指しているのか、何が効果なのか不明になる)など、モデルに弄ばれることになります。

モデルは自らの目的達成のために活用するものですので、十分に理解してから使いましょう。

 

→その2に続きます。