■チェックポイントとクラスタセット
TPI Nextのキーエリアには、成熟度レベル毎にチェックポイントが設定されています。(全部で157あります)
チェックポイントとは、レベル達成を判断するための指標になるもので、それぞれの判定は[Yes/No]の2段階で行われます。
※国際標準での判定方法では[None][Partially][Largely][Fully]の4段階ですので、判定が容易である一方で、達成状況だけでは詳細な把握ができない可能性もあります。(細かくやりたい人は4段階で判定すればよいだけですがねw)
このようにチェックポイントは、キーエリアの成熟度レベル判断の基準を示しながら、段階的に成熟度を上げていく際のロードマップを指し示してくれます。
さらに、このチェックポイントは、キーエリア内部として、そしてキーエリアを越えた「テストプロセス全体」として、どのように段階的に改善していくのがよいのかをA~Mまでの優先度として示しています。このしくみを「基本クラスタセット」と呼んでいます。
この基本クラスタは、テストプロセスを全体的に少しずつ改善していく際に活用するものです。(だから”基本”と付けているらしいです)
ビジネス主導で改善を進めようとした場合は、ビジネス主導要因に基づいて関連付くキーエリアとチェックポイントを選択します。
(これを”クラスタの修正”と呼んでいるようです)
■ユニークなキーエリア1:利害関係者のコミットメント
TMMiでは個別のプロセスエリアのSPに付与されているコミットメントですが、このモデルでは一つ目のキーエリアとして単独で切り出しています。一つ目であることは「最重要である」という意味に捉えてよいと思います。
アセスメントは下手をすると「形式チェック」になりがちですので、どのくらい本気で自らの役割や責務を認識し、実践しているかを確認する必要があります。
■ユニークなキーエリア2:コミュニケーションと報告
コミュニケーションと報告をキーエリアとして切り出し、かつ別々に扱っているのがユニークだと思います。
二つは一緒でもよさそうに感じますが、あえて別出しにしているのは、コンサルタント実績上で重要な要素と認識したからに他ならないと思われます。テストチーム内の協力体制や開発チームとの連携などを実現するのも、コミュニケーションや報告による状況把握が不可欠であるとの認識ではないでしょうか。
■ユニークなキーエリア3:テストツール
他の2モデルには存在しないのが「ツール」です。(TMMIではSPレベルまでの話です)
これもコンサルタント実績上で重要な要素と認識したからに他ならないと思われます。
特に効率化を考えるなら不可欠な要素ですよね。
■ユニークなキーエリア4:テストウェア管理
他の2モデルには単独では存在しないものです。(他の2モデルでは細かいプラクティスの中に埋没していると思います。)
テストウェアとは「テストプロセスを通じて作成される、テストの計画、設計、実行に不可欠なもの。たとえば、ドキュメント、スクリプト、入力、期待結果、セットアップとクリーンアップの処理手順、ファイル、データベース、環境、その他、テストで使用する付加的なソフトウェアやユーティリティなど(JSTQBソフトウェアテスト標準用語集(日本語版)Ver2.2.J02より)」です。
その保管、アクセス、追跡可能な状態の維持、移行、再利用などについて明確化しています。
■ユニークなキーエリア5:キーエリアに”レビュー”は存在しない
今回比較している他の2モデルとの大きな違いの一つは、キーエリアに「レビュー」が存在しないことです。
他の2モデルは(おそらく、ですが)ISTQBとの整合を意識しているためテストの中に(静的テストとして)レビューが含まれており、それを単独のプロセスとして切り出しています。
とはいえ、キーエリア「関与の度合い」や「見積と計画」の効率化レベルには”テスト容易性を把握するレビュー”が載っていますので、決して考慮されていないわけではありません。
■おわりに
いろいろと見てきましたが、テストの有効性を高める意味において、内容が非常に実務的で無駄を削ぎ落として構築されているように感じています。
いよいよ次は最後。ISO33063です。
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