SaPIDは”人間中心アプローチ”

< SaPIDのポリシー【4】人が中心になる >  http://www.software-quasol.com/sapid2-0/

何をやるにも結局それを実践するのは人間です。機械ではありません。

人間は、モノゴトを徐々に習得する。やりそこなったり間違うこともある。

何を大事にしているかは人によって異なる。得手不得手がある。

認められれば前向きになりやすく、心が通わなければ後ろ向きにもなる。。。などなど人間が持つ特性に適切なアプローチが必要です。

例えばソフトウェア工学的な取り組みを行う場合、それをどのように感じるか、どのように実践に結びつけるのが良いのかは、実際にそれに取り組むメンバーやチームの特性を考慮しなければなりません。

 

それを実現させるために、SaPIDでは”人間の行動特性”を考慮したアプローチを随所に採用しています。

 

このことをさらにわかりやすくするために、具体的な例を一つあげてみます。

SaPIDにはSTAGE0~3の4STAGEに、STEP0~9の10STEPがあります。

その中の「STAGE1:現状把握」は以下の3STEPで構成され、現状を明らかにします。

 

 STEP1:問題洗い出し・引き出し

 STEP2:事実確認・要素精査

 STEP3:問題分析・構造化

 

「STEP2:事実確認・要素精査」では、「文章表現7つの原則(例:事実準拠)」・「文章表現5つの禁則(例:対策型)」を活用して、「STEP1:問題洗い出し・引き出し」で提示された多くの”問題”情報から、適切な問題を明らかにしつつ、相応しい表現にあらためていきます。

(詳細は、書籍「ソフトウェアプロセス改善手法SaPID入門」P52を参照)

実は、SaPID解説やミニワークなどを受講いただいたみなさんから、この原則・禁則に対して、「これは役立つ!」「自分もこの原則・禁則を体得して適切な問題表現を書けるようになるぞ!」などプラスの反応が多いのです。

よい反応が多くてうれしい!・・・・・・っと、おやおや、ちょっと待ってください。

 

もし、この原則・禁則を体得したうえで問題を表現するとしたらその実践は「STEP1:問題洗い出し・引き出し」で行うということになります。

STEP1で問題を表現する前に、みなでこの原則・禁則を把握(あるいは情報共有)しておいて、適切な表現の問題だけを書けば(STEP2が必要なくなるので)効率的!ということを考える人もいました。

SaPIDのSTEP2でこの原則・禁則を活用しているのはおかしいんじゃないの?・・・・・そんな意見をお持ちの方もいるかもしれませんね。

 

いやいや、SaPIDではあくまでも意図的に、原則・禁則を”STEP2で(問題を表現し終えてから)”利活用することにしています。

それは”人間の行動特性”を考慮しているからです。

 

では、効率的と思われる段取り(原則・禁則を事前共有しSTEP1のみ)と、SaPIDが意図する段取り(STEP1・STEP2と進め、原則・禁則はSTEP2で活用)の2つがどのように異なるのかを見てみましょう。

以下に示す2つのアプローチでは、どちらがどのような結果になるでしょうか?

 

いや、このようにアプローチされた(問題を書こうとしている)人間が、どのように考えて行動し、どんな結果になると思いますか?

アプローチ1:効率的なはずの段取り アプローチ2:SaPIDが意図する段取り
 「これからみなさんには、普段自分が感じている”問題”を書いてもらいます。」

「ただし、誤った問題を取り上げたり、不適切な表現するようなことがないように”文章表現7つの原則・5つの禁則”を配りますので、それを守って書いてください。」

 これからみなさんには、普段自分が感じている”問題”を書いてもらいます。」

「まずは間違って書いてもぜんぜん構いませんので、自分が”これは問題だ”と思うものを、素直に自分の言葉で書いてみてください。」                

 

※(自分なりに考えてみてから、次を読んでください)

 

 

 

アプローチ1の場合(原則・禁則の事前共有)の思考と行動→結果 アプローチ2の場合(原則・禁則は未活用)の思考と行動→結果

 「間違っちゃいけないから、ただしく書かなくちゃ・・・・・ん~これじゃ原則に合わない・・・こっちだと禁則に引っかかる・・・(筆が止まる)」

「いろいろとあるんだけど・・・・・・当たり障りのないこの内容は原則・禁則に抵触しなそうだから書いて出せばいいかなぁ(一枚だけ書いて出してみる)」

「何だかわからんぞ~。他の人のはどうだろう????なるほど、なるほど。じゃあこういうのはありなのかな(と、他者と類似の一枚を書いて出す)」

 

「思った通り書いていいんだよね!じゃぁ、これと、これと、これ。これ。(どんどん書き出す・筆がとまらない)こんなに書いていいのなぁ?」

「ん~っと、これでしょ。次はこれだな。あ、あれもあるぞ。(どんどん書き出す)」

「昨日これがあったよな。先週はこれがあったし・・・前はこんなことにも困ったよなぁ(どんどん書き出す)」        

                        

結果:

・時間がかかる割に問題として提示されて情報が少なくなる

・数少ない情報の一つひとつはそのまま使える可能性が高い

・一方で、ありきたりな内容、あるいは偏った内容になりがち

結果:

・短い時間で多くの問題が提示される/さまざまな領域の問題候補があがる

・そのままでは使えないモノも多いが、問題を洗い出すヒント情報としても活用できる

 (STEP2で掘り下げれば本当の問題に変換できる)

・それぞれのメンバーがどのように考えているのかが把握できる

 

いかがでしょうか。

ここまで極端ではないかもしれませんが、特徴は掴んでいると思います。

 

アプローチ1では、それぞれのメンバーの頭の中にある情報がなかなか出てこなくなる傾向があります。

それは「原則・禁則」が心理的なストッパーの役割をしたからです。

一方アプローチ2では、「間違ってもいいよ」「自分の思った通り」「自分の言葉で」などにより心理的なストッパーを排除し、むしろ情報提供を促進するようにしています。こうやって、関係者が持つ情報(ダイヤの原石)をSTEP1でたくさん収集し、STEP2で磨いてダイヤに仕上げていきます。

 

 

これは一つの例でしかありませんが、SaPIDは、目先の効率を求めず、欲しい効果を重視して「人間の思考→行動→結果」を予測してSTEPを設計してあります。