レビューの現状と対策(レビュー改善)

レビューは、コミュニケーションの活性化、欠陥検出・予防、生産性向上などへの有効な活動として多くの方たちに認識されています。

しかし、レビューをする時間がない、責められるのでイヤだ、手間と時間がかかりすぎる、効果が実感できない、などの声が多いという状態にあります。そしてさらに、レビュー向けの系統的なトレーニングは非常に少ない”、”組織的にレビュー向けトレーニングを実践しているところはほとんどない”というのが実情です。

その打開に向けて10数年間取り組み、独自の現状評価方法と改善アプローチを確立し、実績を積み上げてきました。

Software Quasolでは、自律型改善手法SaPIDとの連携を含めたレビュー改善へのソリューションを提供します。


 

Software Quasolでは、現状のレビューの問題点を早期に打開し、欲しい成果を獲得するためのトレーニングとしてレビューの実践内容を体得するワークショップを提供しています。(左イメージ画像をクリック)


◆レビューの現状

2009年からこれまで、さまざまな組織、管理者、エンジニアに対してレビューの問題点を調査し、分析した結果、以下のような状態であることがわかりました。

大きく2つのうれしくない状態があります。

 

(1)現状は実質的に”アドホックレビュー”状態である。

レビュー目的や観点はレビューアに委ねられている。その結果、有効な指摘(確認した結果”問題なし”と判定することを含む)はレビューアの経験則やスキルに大いに依存してしまう。

→主に青太線の要素やパスで表現

 

(2)さまざまな要因により的確なレビュー指摘(確認した結果”問題なし”と判定することを含む)がしづらい場・環境になっている。

→主に赤太線の要素やパスで表現 

その結果、悪循環を生むレビューへの負の固定観念ができあがっています。

 

 

 

まとめると、レビューが長い、ツラい、めんどくさい、その割に効果が得られない(”レビューの効果を実感できていない”) 

つまり、レビューは”費用対効果がよくない手段だ”と認識している方が多い状態なのです。

そしてこの状態は、「次のレビューは的確に実践しよう!もっと良い結果を出そう!」とするモチベーションを阻害してしまいます。

 

さらに、「レビューで欠陥検出が不十分」→その後の作業で問題が発覚して手戻り作業を増加させる、品質が確保できない、生産性が上がらない元凶にもなってしまいます。

 

◆レビューパフォーマンスを改善する際に考慮すべきコト

上図を見ると、赤太線で示す要素やパスが多いことがわかります。

これらは「的確なレビュー指摘がしづらい場・環境」を構成する要素とそのつながりです。

要素数やその構造が多岐に渡るため、多くの方たちが”レビューの問題点”を頭に思い浮かべる際にこれらの要素に目が奪われがちです。

例えば、レビューが独演会になる、成果物ではなく人間性をなじられるなどツラい指摘が多い、横道にそれたまま時間を無駄に使う、有識者が(忙しいので)レビューに出られない、などがその典型的な事例です。

これらは「レビューの進め方、会議運営の問題点」と言い換えることができます。

ですが、それらが解消された際に成し遂げられることは何か?をよく考えてみてください。

 

確かにこれらの要素や関係性を打開できれば(横道にそれず、時間を有効に活用でき、なじられるコトがなくなる、ので現状よりは)有効な指摘は増える傾向にはなると思います。

しかし、有識者だけしか有効な指摘ができない、有識者は忙しくてレビューに出られない、掻き集めた(有識者ではない)レビューアが思いつきの観点をバラバラに設定してアドホックにレビューを実施している状態には変わりありませんので、有効な結果を継続的に獲得することはできない状況に変わりはありません。

そう、有効な指摘や確認結果を継続的に獲得するために必要なコアとなる要因は青太線で示す要素やパスなのです。

赤太線で示す要素やパスは、レビューの運営効率を高めるために有効ですが、有効な結果を継続的に獲得する直接的な要因ではありません。

 

このように、レビューで有効な指摘を継続的に獲得するための直接的な要素(青太線で示す要素やパス)、そしてレビューの運営効率を上げるための要素(赤太線で示す要素やパス)の2側面で対策を講じなければ、本当の意味でレビューパフォーマンスを改善することができないということを認識すべきです。

 

現状では、赤太線で示す要素やパスが多いため、それさえ解決すればレビューは良くなると勘違いしている(または、その先まで頭が回っていない)方が多い印象があります。

 

◆必要な対策とトレーニングの全体像

以上のような「レビューの状態」を打開するために、レビュー時のそれぞれの役割(管理者・モデレータ・レビューア・作成者)でやるべきことは何でしょうか。主なものを列挙してみます。

改善対象 主な対策(概要) 主な対策実践者
赤太線で示す要素やパス

□組織的なレビュー観点共有、活用の推進

□組織的、かつ計画的なレビュー実践人財の育成

  モデレータ、レビューア、レビューイ など

的確かつ適切な個別レビュー計画の立案と調整

  目的、主要観点、参加者調整と役割割り当て、各種基準の設定 など

□品質保証計画における適切な全体レビュー計画立案

  最終的にはテスト計画との連携

□レビューを起点としたプロセス改善の実践

管理者

□開始基準の明確化と徹底

□レビュー対象の事前配付/事前レビュー実践促進

□集合レビューへの参加促進、調整

□集合レビュー統制

 ・議論が活性化する場の構築と維持 

 ・目的、観点、役割の再確認とタイムマネジメント

 ・本線逸脱防止

 ・不足する観点の補完  など

□客観的事実に基づく結果判定とふりかえり→個別改善実践促進

□適切なフォローアップの実践  など

モデレータ
青太線で示す要素やパス

□成果物とその構築過程に対する要求の事前認識共有

□丁寧さと効率を両立させた作業実践とセルフチェックの徹底

□適切なレビュー目的、観点設定と認識共有

□観点に基づくレビューケース導出

□適切なレビュー実施と結果共有

□ふりかえり実施とTryの確実な実践による成果向上の実現

レビューア

作成者

基本的な事項が多いものの、多くの方たちが「知っている=頭ではわかっている」でも「実践できていない」→「たくさんあり過ぎて結局どうすればよいかわからない(どこから手を付ければいいのかわからない、を含む)」状態であると推察しています。

 

その状況を打開するための(レビューとしてやるべきこと(実践事項)を促進する)トレーニングの全体像は以下の通りです。

ここでは主に、現状のレビューの問題点を早期に打開して欲しい成果を獲得するためのトレーニングを示しています。

 

最も優先すべきは

  作成者・レビューアの「レビュー設計・実行」領域①と②

 

次に優先すべきは

  モデレータの「レビューマネジメント」領域①

 

です。この2領域は個別レビューのパフォーマンスに直接的な影響をおよぼします。

 

そして中長期的には

  管理層の「レビューマネジメント」領域①と②

  全共通「レビュー設計・実行」領域③

 

などが必要になります。

◆レビューパフォーマンス向上のために

【トレーニング】

  Software Quasolでは、現状のレビューの問題点を早期に打開し、欲しい成果を獲得するためのトレーニングとしてレビューの実践内容を体得するワークショップを提供しています。(右イメージ画像をクリック)

 

 

【コンサルティング】

Software Quasolでは、これまでのレビュー改善実践から導出した独自の”レビューアセスメントモデル”による現状分析~改善実践や、自律型プロセス改善手法SaPIDによる系統的な改善実践など、それぞれの状況に応じたレビュー改善アプローチを提案し、トータルサポートいたします。

 

 

費用や期日なども含めて柔軟にアプローチを組み立てられますので、まずはお気軽にご相談ください。

◆トレーニング・コンサルティングの効果(事例)

レビューのトレーニングやコンサルティングの結果、得られる効果の事例をご紹介します。

下表は、普段アドホックレビューを実践している(これをBeforeとします)方たちが、トレーニング(またはコンサルティング)を受けた結果(これをAfterとします)、指摘事項がどのように変化したのかを示すものです。(受講者自ら評価した結果です)

 

表は受講者(5名)が要求仕様書(要求定義)レビュートレーニング結果をBefore-Afterで(自ら)評価したものです。

△と●は、それぞれアドホックレビュー15分間(Before)と目的・観点設定レビュー15分間(After)による指摘事項1件を示しています。(Before△=計8件の指摘・After●=計14件の指摘)

縦軸は、レビューによる指摘事項が持つ相対的な価値を指します。相対的な価値とは、レビュー対象が持つ欠陥(不備や問題点など)を見逃した場合にあとで発生する被害の度合を意図し、それを食い止められること=価値として捉えています。

一方横軸は、このレビューで指摘事項を見逃してしまった場合、その後のフェーズのどこで発見できる(可能性がある)のかを指しています。(UT=ユニットテスト、IT=統合テスト、ST・OT=システムテスト・運用テスト、C/O後=カットオーバー後(リリース・納品後)

問題(欠陥を含む)はその解決を先送りするほど被害が大きくなります。表右側に位置付くほど被害が大きくなる傾向が高まるので、それをレビューで指摘できれば被害を食い止めた=効果があるとみなせます。

つまり、表の上側・右側にプロットされる指摘事項ほど価値(効果)が高いと評価できるわけです。

そして、その価値を定量的にも把握するために、縦軸・横軸それぞれに価値を数値化するための重み1、3、5を付与しています。

 

アドホックレビューでの指摘事項△は左下側に分布しています。具体的には、「ここの表現がわかりにくい」「具体的な数値がない」などの表面的な指摘事項ばかりでした。一方、(大事なポイントを理解してから)事前にレビュー目的・観点設定を行いレビューを実践した結果●は、左下だけではなく、右側と上側に分布しています。指摘事項としては、アドホックレビューで指摘された事項の他に、「想定する利用者にはこの機能は必要ない」「これでは利用する際にどうしてよいかわからない」など、根本的かつ重要な指摘が多く含まれています。

レビュー指摘事項の価値を数値化した結果でも「Before△=14ポイント」→「After●=146ポイント」とその差は歴然です。

 

<トレーニング受講後の感想例>

・目的・観点を再認識することで、こうまでレビューの質に差が出るのかと驚きました。日々の業務にもダイレクトに活かしていけそうです。

・レビュー改善の効果を実感できる、これなら自分でも改善できそうだと思える、よくできたワークだと思います。

・観点設定~分類整理の途中でいきづまり思考停止しました。普段いかにそういった作業を避けてきたかということに気づきました。

・レビューの重要性、また難しさを改めて実感できました。また、なるほどと思う考え方やものの見方を知ることができました。

・あっという間に時間が過ぎました。もっと時間をかけて解説とワークを実施して欲しい。

・レビューに対するモチベーションが向上した。

・レビューする人、される人(開発者)、テストする人、誰もが受講して理解し、実践すべき内容だと思いました。

 特に開発者に受講してもらいたい。

 

【参考情報】

レビューの全体像やそれぞれの実践事項、目的・観点設定をするとどのような効果が得られるのか?そしてその先には何が待っているのか?については以下の資料が参考になります。特に「レビューの目的・観点設定の効果と課題」については、レビューイ・レビューア・モデレータ向けトレーニングの内容と効果、その後の対策を示す内容となっています。有効なレビュー実践のために参考にしてください。

 

レビューの問題分析結果とレビューとしてのあるべき全体像と個別詳細を示したものです

ソフトウェアテストシンポジウム2015東北(JaSST'15東北) 基調講演

「現在のレビューに必要な次の一手を把握するレビュー実践ウォークスルー」

http://www.jasst.jp/symposium/jasst15tohoku/pdf/S1.pdf

Slideshare:http://www.slideshare.net/AdachiKenji/20150529-ja-sst15web

 

レビューの問題点をSaPIDシステムズアプローチで分析し、攻略ポイントとその解決手段を導出、実践結果を考察したものです

ソフトウェアテストシンポジウム2016東京(JaSST'16東京) 【ベストスピーカー賞受賞】

「レビューの目的・観点設定の効果と課題」

http://jasst.jp/symposium/jasst16tokyo.html

http://www.jasst.jp/symposium/jasst16tokyo/details.html#A2-1

Slideshare:http://www.slideshare.net/AdachiKenji/ss-59510938

 

◆”観点設定に基づくレビュー実践ワークショップ”の結果から得られた課題の解決策として”レビュー観点設計”を実践・考察したものです

ソフトウェアシンポジウム2016米子(SS2016米子)

「レビュー要求分析・設計・実装試行でわかったこと」

ダウンロード
SS2016事例報告(HBA安達).pdf
PDFファイル 1.2 MB