このたび、折り紙を使ってTOCのさまざまな実践ワークを展開している水野のりゆきさん(以降、みずのりさん)とジョイントして、不確実な状況の中で未来を予想しながらミッション達成を目指す「チーム運営」を体感するワークを開発しました。
当ワークは2016年4月頃にみずのりさんと2人で検討を開始、月1回ほどの打ち合わせを重ね、2016.11.19(土)にワークショップ(試行)として初公開しましたので、そのレポートを兼ねて当アプローチを概説します。
今回のワークの会場は札幌中心部、大通にある「さっぽろ大通コワーキングスペース ドリノキ」。
当日は14名の方たちに受講いただきました。
(うち、1名は所要のため途中からの参加でした)
まずはワークショップの目的や概要をお伝えしたあと、3つのチームに分かれて簡単な自己紹介やチーム名検討を含めたアイスブレークを実施。
この時点では初めて会った方も多いためちょっと雰囲気は固めです。アイスブレークにより少しずつ和やかになっていきました。
アイスブレーク終了後、ワークの準備に入ります。
このワークショップは指定された種類の折り紙を、指定された数量取り揃えることをひとつのプロジェクトと見立て、「未来予想図」を使いながら首尾よくミッション達成ができるかどうかに取り組みます。
ということで、ワーク準備では全員で「折鶴を1つ折る時間」を計測しました。プロジェクトの先を見通すための基礎情報として、各自の折り紙を折る能力を事前に把握しておくことが目的です。
最も速い方で2分台、最も遅い方で10分超えという結果となりました。これだけ能力が異なると本題の予測と結果はどうなるのでしょうか???
写真は「システムザンギマニア」チーム(謎(笑))の折鶴作成時の様子です。
この写真はとある参加者の方が折った鶴です。
なんとなくそれっぽい感じはするのですが、よく見ると新種(?)の鶴のようです。(笑)
この鶴を折った方は完成までに相当苦労した様子でした。
実際のプロジェクトでは速さもさることながら、出来栄えも大事ですよね。(笑)
準備も整いましたので、いよいよ実際の「ミッション」が提示されます。
今回のミッションは「6種類」の折り紙をメンバーの人数分、所定の時間内に折ることが申し渡されました。
実際のワークの進め方(概要)は以下のとおりです。
(1)現状持ちうる情報からメンバー全員が未来予想を行い、付箋に書き出す
↓
(2)チーム内でそれぞれの付箋の内容を確認し、表現を適切に整え共有する
↓
(3)付箋を所定の位置に配置し、全体の関係性を把握する(=未来予想図の作成、または更新)
↓
(4)未来予想図の全体像からミッションを達成するために手を打つべき要因を特定する
↓
(5)特定した要因を打ち抜く具体策を明確化する
↓
(6)実践
↓
(7)実践結果をふりかえる
↓
((1)へ戻る)
今回のワークではこれらを3回繰り返しました。
みずのりさんに”あるチームの未来予想図”を持ってもらいました。
台紙に使っている半透明のシートはなんと「ゴミ袋」。
ホワイトボードのようにマーカーで書いたり消したりすることができ、持ち運びも軽いです。
このシートの上にメンバーが予測したことを書いた付箋を貼り付けて構造化し、全体を俯瞰しながらどこに手を打つと効果的なのかを特定します。
一部の付箋に丸い色つきシールが貼ってあるのは、チーム内で各メンバーがどの要因が効果的と考えたのかを表明した証です。
複数のメンバーがいつも同じように考えるわけではありませんので、「投票(シールの貼り付け)→意図の説明」などを繰り返しながらチームとしての結論を導き出していきます。
次に未来予想図で特定した”手を打つべき要因”をこのふりかえりシートの左上に貼り付け、その要因に働きかける具体的な対策を検討、その結果を左下に貼り付けます。
以上の内容をベースに実際に折り紙ワークを進め、その結果をふりかえって右側に貼り付けたのがこの写真です。
そしてふりかえり結果を活用しながら「未来予想図」を更新して・・・とまわしていきます。
これは折り紙を折っている最中です。
1実践は5分間。
誰もが集中していてまさに真剣そのもの。
普段の仕事もこうありたいものだなぁと感じました。
実践が終わるとすぐにふりかえりに入ります。
今の実践で得られたことは何か?検討した対策は効を奏したのか?思わぬ拾い物はなかったか?うまくいかないことは?このまま進んだ場合危惧されることは?などを自由にふりかえります。メンバーそれぞれが付箋に結果を書き込み、その内容を簡単に説明して共有します。
その過程で他のメンバーが「なるほどそうだね!」とか「自分も同じことを考えたよ(といって付箋を重ねる)」「・・・とするとこういうこともあるよね(新しい付箋にその場で書いて提示する)」のようにチームの”気づき”を増幅させながらKeep/Problemを確定していきます。
この結果のよしあしが、この後の予測精度を決めるわけですね。
写真は進め方(1)~(7)のSTEPで登場する情報を説明するものです。
※ワークのネタばれになるのを避けるため、写真の文字情報は軽くモザイクを入れています。
(1)~(3)の結果:写真真ん中にある大きな黒枠
→このチームの未来予想図
(4)の結果:写真左上にあるドキュメント(3つの黒枠があるもの)の左上の黒枠
(5)の結果:写真左上にあるドキュメント(3つの黒枠があるもの)の左下の黒枠
(7)の結果:写真左上にあるドキュメント(3つの黒枠があるもの)の右の黒枠
ワークの途中では適宜休憩を入れながら進めます。
当日はワークの休憩中に「影絵」をやっている方もいらっしゃいました。
いや~和みますね~。(笑)
こんな感じで「ゆるーい空気」と「白熱する折り紙実践」が共存するワークショップなのでした。
人数が多くちょっと手狭だったせいもありますが、(1)~(7)のサイクルを回すほど、チームの机の上は成果物、ふりかえりシート、未来予想図などが入り乱れ、カオスと化していきました。(笑)
実際のワークでは、チームの状況に応じて「折り紙コンサルタント」や「支援要員」が適宜投入されたり、顧客・関係組織との条件調整(「こうはしてもらえないの?」→「却下!」(笑))が繰り広げられるなどリアルなプロジェクトのありようを垣間見た気がしました。(笑)
当初ほぼ全員が「達成は無理」と判断していたミッションであるにもかかわらず、
・5分×3回のワークでミッションを達成したのが1チーム
・アディショナルtime3分以内でミッションを達成したのが2チーム
ということになりました。
■受講者の評価結果と感想
受講者による評価結果は表のとおりとなりました。
満足度、学習度、有効性、どれをとっても概ね「よい」と思っていただけたようです。よかったよかった。
特徴的なのは満足度よりも"有効性”が高いことで、これはうれしい結果でした。
【主なポジティブコメント】
・難易度、ふりかえり予想、実績のバランスが良く、わかりやすい。メンバーで課題共有しながら対策検討出来るので、自身で考える強いチームが出来そう。
・ふりかえりと全体俯瞰を挟むことが出来たのが良かった。仕事でも使えそう。良く考えられたプログラム。全体俯瞰でタスクを考えていくアプローチをプロセス化する方法が共感。
・厳しい条件が与えられるとネガティブな反応が出るが、冷静になり俯瞰すると達成可能性が高まる。
・未来予想図は個人でも使えて、仕事に活用したい。
【主なネガティブコメント】
・もう少しふりかえりに時間がほしかった。
・実際に行う場合のコンフリクトの解説、対策の話があると良い。
・先に座学をやってワークの熱量は下げた方が良かったかも。
以上が初開催した「SaPID×TOC 未来予想型チーム運営ワークショップ」のレポートでした。
今回みずのりさんとジョイントできたこと、その結果チームのメンバーがその時点時点で感じるリスクを表現、共有して未来を予想しながら進めていくとはどういうことなのかを体感できるワークが生み出せたことがとてもうれしいです。
今回のワークで得られた教訓などからワークをさらにブラッシュアップし、首都圏を含めた日本の各地域でこのワークを展開していく予定です。