SaPID®+ (サピッドプラス)
”SaPID”+”価値観・行動変容/問題モデリングアプローチ”による自律運営チーム構築・変革手法
※SaPIDは株式会社HBAの日本における登録商標です。
SaPID+(サピッドプラス)とは、SaPID plus(+) Trouble Modeling approachの略語です。
自律型プロセス改善手法SaPIDと自律運営チーム構築・変革手法である価値観・行動変容/問題モデリングアプローチ(以下、問題モデリングアプローチとします)をシームレスに連携し、導入時の負荷を最小限にしつつ自律運営を実践するチームを作り上げていく手法です。
チーム立ち上げ時、実践中などのタイミングを問わず適用することが可能です。
◆SaPID+の全体像(2016.1.12 Release)
SaPID+(サピッドプラス)の全体像は上図の通りです。
前段のMODE1~2は主に自律運営チーム構築・変革手法である問題モデリングアプローチが、そのあとのMODE3~5を自律型プロセス改善手法SaPID(サピッド)が受け持ち、チームによる的確かつ俊敏な問題発見解決~リスクマネジメント実践までを段階的に実現していく手法となっています。
つまり要約すると、SaPIDと問題モデリングアプローチのハイブリッド手法(下図)であるということになります。
SaPID+ ((総合的)自律運営チーム構築・変革手法) |
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価値観・行動変容 問題モデリングアプローチ (自律運営チーム構築・変革手法)
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SaPID(Ver2.0) (自律型プロセス改善実践手法) |
◆SaPID+構築までの軌跡
<SaPID実践と体系化・公開 2006頃~2014年>
先行して開発・リリースしたSaPIDは、われわれが実践してきた組織的改善(生産革新)活動をベースに、プロセス改善を現実的に、段階的に高度化していくアプローチとして体系化したものです。
※SaPIDの誕生までの軌跡・実践事例については「SaPID2.0」を参照ください
この手法では、対象となるチームや組織が、ふりかえりを中心とした簡易な改善実践からスタートし、最終的には的確かつ俊敏なリスクマネジメント実践ができるようになるまでの現実的、段階的な道筋を提供しています。
また、この取り組みの中では、プロジェクト運営(問題発見・解決)と改善を自然に連携することを試行していました。
プロジェクト運営(問題発見・解決)と改善の連携実践事例
ソフトウェア品質シンポジウム2014(SQiP2014) 「プロジェクト運営と改善実践の連携・一体化」 ~プロジェクトマネジメントにおけるSaPIDシステムズアプローチ活用事例 |
しかし、日々の問題に翻弄されている/改善をやっている場合ではないチームや組織への適用が難しくなる弱みがありました。
<問題モデリングアプローチの試行と開発 2015年上半期>
そこで、日々の問題に翻弄されている(改善なんてやってられない)チームを、自らのチカラで状況打開しつつ、自律した運営を実現するために「問題モデリングアプローチ(全体像=左図)」を開発しました。
問題モデリングは、チームや組織に存在する個々の問題をよりタイムリーに把握し、よりわかりやすく表現(何が起きているか、どこにどのくらい起きているか、どのように関連して起きているのか等)し、共有した結果、関係者全員が問題を(最終的には全体構造と、個別詳細の両面で)把握・理解・納得し、当事者としてチームワークよく問題解決や改善を実践しながら自律的に成果を上げていくことを目指すアプローチです。
現状の運営方法への変更を最小限にし、個別問題発見・解決実践→個別改善実践→是正処置実践→是正・予防処置実践を経て、最終的にプロセス改善を含めたチーム全員によるリスクマネジメント実践を目指します。
その際に着目したのは、何を重視してチームを運営していくのがよいのか=普段何気なく認識している大事な原則と、毎日の実践内容とのギャップ(不整合)に気づいてもらい、誤認識を改めてもらうことです。これをチームの発展段階のそれぞれの局面で段階的に実践していきます。
つまり、価値観と行動を整合・連携させる(変容する)アプローチであるとも言えると思います。
問題モデリング実践事例
ソフトウェアプロセス改善カンファレンス2015(SPI Japan2015) 【わくわく賞受賞】 「自律型プロジェクトチームへの変革アプローチ事例」 ~チームの価値観変容を重視し、問題モデリングを活用したSaPID流プロセス改善アプローチ~ http://www.jaspic.org/event/2015/SPIJapan/session3C/3C-3_ID012.pdf
※”わくわく賞”とは、SPI Japan2015のテーマ 「発見!」 ~出会ってワクワク! さぁ、次のステージへ!~ に合致する発表(発表を聞いてわくわくしたもの)を聴講者投票により決定したものです。全33発表の中から選ばれました。聴講者のみなさま、ありがとうございました! |
最初から参考にしたわけではありませんが、このアプローチは生活習慣病予防で活用される「行動変容・行動療法」で採用されている手法に合致する内容になっています。
行動変容手法 | 手法の概要 |
ピアラーニング法 | 同じ目標を持つ仲間と学ぶことで“自分もできそうだ”感を高める |
行動強化法 | ある行動の直後に自分にとって好ましいことが起きると、同じ行動を繰り返すようになる |
生きがい連結法 | メンバーにとって重要な意味を帯びる内容と結びつける |
リフレイミング | その人が持つ判断、認知過程の枠組み(frame)を修正する |
しかし、このアプローチで実現できるのは、主に個別問題発見解決&個別改善まで(図のMODE1とMODE2まで)です。
つまり、”ビジネス志向”になりにくい、という弱みがあります。
<問題モデリング実践でわかったこと>
問題モデリングに取り組んでみて(以前からそうだろうと思っていたことが)確信した(確信に変わった)ことがあります。
それは「何が問題なのか」「どのような問題なのか」を関係者間で共有できないチームでは、適切な改善は難しい、ということです。
よく改善では「根本原因を特定し、それを除去せよ」と言われますが、その前提条件は「問題を事実ありのまま表現し、関係者間で共有できる(そして納得する)こと」そして、「たくさんの問題の中から、取り組むべき問題を適切に特定できること」となります。
しかし、”問題”は毎日の業務運営の中であたり前に存在していますが、それを把握し、どのような内容かを”関係者全員が理解でき、共有する”ことは(実は)簡単ではありません。
その実現を可能な限り容易にするアプローチが問題モデリングです。
<SaPID+の開発とリリース 2015.12~2016.1>
以上の結果から、2つのアプローチの強み・弱みを相互補完し、自律運営チームの構築、そして自律運営チームへの変革を目指すアプローチとして構築したのが「SaPID+」です。下図のように、お互いの強みと弱みを相互に補完する関係にあります。
SaPID | 問題モデリングアプローチ | |
強み
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□ふりかえりを中心とした簡易な改善実践からスタートし、最終的には的確かつ俊敏なリスクマネジメント実践ができるようになるまでの現実的、段階的な道筋を提供している □ビジネス志向を実現するノウハウが実装されている |
□自らのチカラで問題に翻弄されている状況を打開しつつ、自律した運営を実現できる |
弱み
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□主に”改善”からアプローチするため、それ(改善)以前の実務実践が思うようにできていない(日々の問題に翻弄されている)チームへの適用が難しくなる |
□実現できるのは、主に個別問題発見解決&個別改善まで □毎日の実務に目が向き過ぎて”ビジネス志向”になりにくい |
SaPID+の有効性を高めるためにも、その開発とリリースは、SaPID2.0改訂と並行して行いました。
(SaPID2.0の改訂内容については「SaPID2.0」を参照ください)
例えば、Business Model Canvas & Value Proposition Canvas等によるビジネスのASIS/TOBE明確化や、Goal Structuring Notationを活用したビジネスゴール~達成要件明確化、そして問題構造化で実務上の問題連鎖とビジネス成果状況までの道筋を明らかにするなどの手法を採用することで、問題モデリングの弱み「”ビジネス志向”になりにくい」に対応しています。
<SaPID+の適用タイミング>
SaPID+により、どのようなチーム運営の状態(タイミング)からでもアプローチできるようになります。
□これから新しいチームを立ち上げて運営していく場合
□毎日問題や変更依頼などに翻弄されているチームや組織
□実務実践はそこそこできているがビジネス志向に欠けるというチームや組織
□大きな問題が発生して責任者や顧客が改善を要請しないと改善が実施されない組織やチーム
□CMMIやQMSなどを活用してきたが、やらせる/やらされる改善や形式対応・重厚プロセスばかりが目につき、効果が不明である組織
□改善の効果が実感できない組織やチーム
□凄腕リーダが牽引してきたときはうまくいっていたが、そのリーダが外れたとたんにうまくいかなくなったチーム
など
ただし、手法とチーム・リーダの性質との相性などもありますので、誰がやってもうまくいくわけでもありません。
その適用や拡大時には、事前の人選やチーム選定などを適切に実施することが必要です。
<SaPID+の難点(?)>
一見簡単そうに見えますが、SaPID+は(SaPIDも)銀の弾丸ではありません。(もちろん可能な限り容易化していますが)
例えば、問題モデリングで重視する”その日の問題その日のうちに”(MODE1)をちゃんと実践できるようになるまでには最低数週間、最大で数か月かかります。(頑なに既成のやり方を変えようとしないない人たちであれば、いつまでも実現できない場合もあります。)
また、STEP0-1をどのタイミングで実践していくのかは一律ではなく、チームの背景や状況などを見て個別に決める必要があります。
このように、SaPID+の適用とファシリテートは簡単ではなく、それなりに時間・期間が必要になります。
また、成長する気がまったくない人やチーム・組織への効果は多くを期待できませんし、適用の効果を保証するものでもありません。
赤ちゃんが立って歩けるようになる過程や、自動車がうまく運転できるようになるまで、あるいはよい設計ができるようになるまでと同じで、人間がモノゴトを身につけて自律的に実践できるようになるには、「できるようになりたい!」という強い気持ちとTry&Errorの繰り返しによる学習期間が不可欠です。
この難点(?)のうち、やる気を引き出し、前に向かって進む場を作り、狙う成果を得るのは経営者・管理者・リーダの責任(役割)です。
そして、その土台の上でSaPID+やSaPIDをより適切に適用・実践支援し、有効なTry&Errorの繰り返しによる学習を促進するのがSaPIDファシリテータです。
最終的には経営者・管理者・リーダなどがSaPIDファシリテータとなるのが理想ですが、そうなるまでは(自動車の運転であれば教習所の教官にあたる)外部のSaPIDファシリテータに教えてもらうしかないと思います。
そしてしっかりSaPIDやSaPID+を身につけた本人がSaPIDファシリテータとして組織内部に拡げていくのがまっとうなアプローチです。
遠い道のりのように思えるかもしれませんが、これを着実に進める方が競争力を身につける近道です。
いろいろ書きましたが、この難点(?)はSaPIDに限った話ではありません。
CMMIやQMSの適用でも(本当の意味でそれらを使いこなして目的達成を目指す場合は)同じことが言えると思いますので、以上の内容をしっかり認識しておいてください。