SaPID®2.0 (サピッド2.0)
自らの問題意識から始める自律型プロセス改善実践手法
※SaPIDは株式会社HBAの日本における登録商標です。
SaPIDとは、”Systems analysis/Systems approach based Process Improvement methoD”の略語で、当事者自らが解決すべき問題点を特定し、現実的に解決(改善)しながら段階的・継続的にゴールを目指す手法です。
誰かにやらせる、やらされるのではなく、当事者自らの意思で自律的に運営し、改善を進めることを志向するのが特徴です。
「ソフトウェアプロセス改善手法 SaPID入門」
現場力を引き出すシステムズアプローチ
2014/03発刊 日科技連出版社
http://www.juse-p.co.jp/cgi-bin/html.pl5?i=ISBN978-4-8171-9510-4
Amazon :http://amzn.to/1OEvoL1
※当書籍はSaPIDの当初版(Version1.0)の内容です。
Ver2.0はVer1.0の内容をほぼそのまま踏襲していますので、まずは当書籍をご覧ください。
◆SaPIDのコンセプト(コンセプト=対象全体につらぬかれた、骨格となる発想や観点)
自らが変化の起点になる。自らを変える・律することによって結果を出す。成果を上げる。そして(その結果)周囲が変わる。
これがSaPIDを構築する際に最も重視した”原点”であり、基本となるシナリオです。
よいことも、わるいことも、自分の身に起こる結果や状況は「自らを映し出す鏡」と捉える。
もし現時点でよくない状況、思わしくない状態だとしたら、それは自分が作り出していること。
だから自らが変わることで状況や結果を変えることができる。
自らを律し、自分事としてたゆまず取り組めば必ず実現できる。
ではどうしたら”自分事”として取り組むことができるのか。。。と試行錯誤し、その実現を促すアプローチや手法を束ねて体系化したものがSaPIDです。
※一般的な”自律”の意味は、「自分で立てた規範に従って、自分の事は自分でやって行くこと。」となっています。
SaPIDではこの意味をさらに拡張して、「社会的にも役立つ自らの規範に基づいて、関係者や周囲、組織と連携しながら自分(たち)の事を自分(たち)でやっていくこと。」と捉えています。
自分が自分がと周囲や組織、社会に迷惑をかけながら前進するような”自分勝手”ではなく、自らの特性を活かして周囲や組織、社会に貢献し、周囲も自分もうれしくなる、幸せになる”自律”を目指す意味でそのように捉えています。
◆SaPIDのポリシー(ポリシー=物事を行うときの方針や原則)
上記のコンセプトを実現するために実践する基本方針は以下の通りです。
【1】顧客&会社&現場三方よし
”三方よし”とは、近江商人が永続するビジネスの大事な心得としていた言葉です。
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」~売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるということを示しているそうです。
SaPIDでは、自律したチーム・プロジェクトが実践すべき事項の一つとして、まず「顧客」「会社」「現場」がすべて”よし”となるポイントを見つけて適切な手段を打つことを大事な基本方針の一つとしています。
【2】ビジネス価値向上への継続的な有効性重視
顧客・組織・現場=関係者がみんなで喜ぶためには、ビジネスの価値を継続的に高めることが必要です。
提供した価値への対価と利益を活用して、さらに高い価値を顧客に提供し続けること。
その実現に有効な取り組みを実践することがSaPIDで重視していることです。
プロセスモデルへの適合やプロセス改善は、その手段であって目的ではありません。
【3】QCD三方よし
もう一つの三方よしは、製品品質(Q)、コスト(C)、納期・期間(D)すべてをよくする方策を実践することです。
同じ能力のままではQCDのいずれか(例:品質)をよくすると別の要素(例:コスト)が悪くなるような”トレードオフ”しかできません。
関係者すべての人たちがうれしくなるために本当に必要なことは、すべての特性をよくすることです。
QCDすべてをよくするために必要な能力の向上を実践しながら進めるのがSaPIDの基本方針です。
※SaPIDでは「顧客&会社&現場三方よし」+「QCD三方よし」を略して「ダブル三方よし」と呼んでいます。
【4】人が中心になる
何をやるにも結局それを実践するのは人間です。機械ではありません。
人間は、モノゴトを徐々に習得する。やりそこなったり間違うこともある。
何を大事にしているかは人によって異なる。得手不得手がある。
認められれば前向きになりやすく、心が通わなければ後ろ向きにもなる。。。などなど人間が持つ特性に適切なアプローチが必要です。
例えばソフトウェア工学的な取り組みを行う場合、それをどのように感じるか、どのように実践に結びつけるのが良いのかは、実際にそれに取り組むメンバーやチームの特性を考慮しなければなりません。
それを実現させるために、SaPIDでは”人間の行動特性”を考慮したアプローチを随所に採用しています。
◆SaPID (Ver2.0(略称:SaPID2.0)の全体像
SaPIDは、現状把握(問題発見)~改善実行・完了までの大枠の進め方を示すSTAGEと、その内訳(詳細)を表すSTEPにわかれています。STAGE1:現状把握~3:改善実行の意味については、一般的な改善アプローチでも同じですので、特に説明するまでもない内容だと思います。特徴的なのは「ビジネス側面」を取り扱うSTAGE0があることですが、当初からフル実践することは求めていません。
当初はSTAGE0-STEP0-2から始め、段階的に目標を上げながら改善実践実践を繰り返していきます。そして実践状況によりビジネス側面にも携わる段階になったと判断した場合にSTAGE0-STEP0-1を適用します。
また、それぞれのSTAGE-STEPは、一方向に進んで戻らないわけではなく、頻繁に行きつ、戻りつ相互調整を行いながら進めます。
1990年代から活用され始めたプロセスモデル(CMMIやQMSなど)による改善アプローチでは、STAGE1:現状把握をプロセスアセスメント(あるいは審査・監査)で明らかにします。しかしSaPIDでは、(プロセスモデル活用による思考停止&形式対応を防止するため)当事者であるメンバーの問題意識をベースとした問題構造分析によりSTAGE1:現状把握を行ない、全員参画で改善に取り組みます。
たくさんの問題事項の中から、その時点の状況で取り組むべき要因を特定し、自分たちが導出できる対策でアプローチする。
それを繰り返しながら自らの問題発見・解決力、再発防止力、リスクマネジメント力を段階的に高め、自律した個、チーム、組織を創り上げます。
◆SaPID Ver2.0(略称:SaPID2.0)の主な改訂内容(2016.1.7 Release)
◆SaPID 誕生までの軌跡・実践事例
◆後日SaPIDの基盤となった取組み=システムズアプローチ実践事例を初めて発表したものです
ソフトウェアプロセス改善カンファレンス2007(SPI Japan 2007)
現場の様々な事実情報分析に基づく現実的な改善アプローチのご紹介
-システムズアプローチを活用した改善実践事例-
http://www.jaspic.org/event/2007/SpiJapan/2A3.pdf
◆SaPIDで重要な役割を持つ”ふりかえり”の進化を、われわれが辿った経過を考察して示したものです
ソフトウェアプロセス改善カンファレンス2011(SPI Japan 2011)
ふりかえり実践方法の変遷による業務運営プロセスと成果の改善
http://www.jaspic.org/event/2011/SPIJapan/session3B/3B4_ID008.pdf
◆SaPIDでPFDを活用し、ASIS/TOBEを明確化してアプローチした事例です
ソフトウェアプロセス改善カンファレンス2012(SPI Japan 2012)
システムズアプローチによる問題発生構造分析とPFD(Process Flow Diagram)を用いたプロセス改善
http://www.jaspic.org/event/2012/SPIJapan/session3A/3A3_ID009.pdf
◆SaPIDとして初めて体系化した内容を事例付きで示したものです(書籍「SaPID入門」のベースとなった内容です)
ソフトウェアプロセス改善カンファレンス2012(SPI Japan 2012)【最優秀賞受賞】
システムズアプローチに基づくプロセス改善メソッド:SaPIDが意図するコト
(Systems analysis/Systems approach based Process Improvement methoD)
〜プロセスモデルをより有効活用するために/そして現場の自律改善運営を促進するために〜
http://www.jaspic.org/event/2012/SPIJapan/session3A/3A4_ID023.pdf
◆主にSaPIDファシリテータ(改善促進・支援役=主にマネージャの役割)の実践事項・注意事項を示した内容です
ソフトウェアプロセス改善カンファレンス2013(SPI Japan 2013)【実行委員長賞受賞】
SaPID実践事例より~改善推進役がやるべきこと/やってはいけないこと
現場が自らの一歩を踏み出すために
http://www.jaspic.org/event/2013/SPIJapan/session2B/2B3_ID011.pdf
◆モデルベースのアセスメント結果を活用して問題構造を明確化し、改善すべき内容を特定する方法を提案したものです
→「SaPID2.0 モデルベース改善アプローチに対するSaPID Plug-in optionの提供」の元ネタ
ソフトウェア・シンポジウム 2013 in 岐阜 (SS2013) 【最優秀発表賞受賞】
「プロセスアセスメント結果の現実的・効果的活用方法の提案」
◆SaPID問題構造分析でムリなく自らの実務内容を明確化し、段階的にリスクマネジメントできるようになる方法を提案したものです
派生開発カンファレンス2013
問題構造分析とPFDの併用による現実的・段階的な改善実践方法の提案
~PFDを使いこなす能力を確実に身に着けるために
http://affordd.jp/conference2013/xddp2013_p8.pdf
◆以上の取り組みのうち、自律型改善アプローチを体系化し、書籍化したものです
「ソフトウェアプロセス改善手法 SaPID入門」
現場力を引き出すシステムズアプローチ
2014/03発刊 日科技連出版社
http://www.juse-p.co.jp/cgi-bin/html.pl5?i=ISBN978-4-8171-9510-4
Amazon :http://amzn.to/1OEvoL1
◆SaPIDを活用して実務を実践するチームが自ら改善した事例の解説ビデオです
情報処理推進機構(IPA)が主催したセミナーでの事例解説の模様を映したビデオ
「ソフトウェア開発現場の"気づき"から始めるプロセス改善 実施事例紹介その1」
https://www.youtube.com/watch?v=n4aRBB_zv2c
※ビデオ内の表題はSPINA3CH(スピナッチキューブ)となっていますが、実際にはSaPIDでアプローチした事例になっています。
◆SaPIDの原点となった私が所属したチームの継続改善実践をプロジェクトマネジメントの側面から考察したものです
ソフトウェア品質シンポジウム2014(SQiP2014)
「プロジェクト運営と改善実践の連携・一体化」
~プロジェクトマネジメントにおけるSaPIDシステムズアプローチ活用事例
https://www.juse.jp/sqip/symposium/archive/2014/day1/files/happyou_B1-3.pdf
◆自律したチーム運営の前提となる「自律型問題発見・解決実践」を促進する問題モデリングアプローチの実践事例です
ソフトウェアプロセス改善カンファレンス2015(SPI Japan2015) 【わくわく賞受賞】
「自律型プロジェクトチームへの変革アプローチ事例」
~チームの価値観変容を重視し、問題モデリングを活用したSaPID流プロセス改善アプローチ~
http://www.jaspic.org/event/2015/SPIJapan/session3C/3C-3_ID012.pdf
◆レビューの問題点をSaPIDシステムズアプローチで分析し、攻略ポイントとその解決手段を導出、実践結果を考察したものです
ソフトウェアテストシンポジウム2016東京(JaSST'16東京) 【ベストスピーカー賞受賞】
「レビューの目的・観点設定の効果と課題」
http://jasst.jp/symposium/jasst16tokyo.html
http://www.jasst.jp/symposium/jasst16tokyo/details.html#A2-1
Slideshare:http://www.slideshare.net/AdachiKenji/ss-59510938
◆SaPIDシステムズアプローチを全社レベル(全社員800名)に展開して3ヵ年の中期経営計画を立案、展開した事例です
これにてSaPIDは組織階層のそれぞれ(経営層・管理層・実務層)に対する実践を公開したことになります
ソフトウェアプロセス改善カンファレンス2017(SPI Japan2017)【特別賞受賞】
「自分事化影響要因に着目した中期経営計画立案・展開への共創アプローチ[現状分析~計画立案編]」
◆テストの問題点をSaPIDシステムズアプローチで分析し、TPI NEXTによる評価結果を併用しながら自律化を目指すアプローチの事例です/SaPID3.0で「自分を知る」→「自分を活かす」→「自らのミッションに従う」の実践事例を兼ねています
ソフトウェアテストシンポジウム2018東京(JaSST2018東京)【ベストスピーカー賞受賞】
「TPI Nextを活用したチームメンバーの問題意識から始めるテストプロセス改善」
◆SaPIDの取組み・拡がり
□全国各地で開催されたSaPID勉強会
全国各地で(一部勝手に(笑))開催されたSaPIDの勉強会履歴です。
他にも開催された実績はありましたが、現時点でインターネット上に残っている情報を掲載しました。
・課題解決の考え方を勉強しよう!勝手にSaPID勉強会(関西)
2013年06月15日(13:30~17:30)
http://kokucheese.com/event/index/93396/
勝手にSaPID勉強会@大阪のツイートまとめ
・課題解決の考え方を勉強しよう!勝手にSaPID勉強会 in町田
2013年6月29日(13:00~17:00)
http://kokucheese.com/event/index/95834/
勝手にSaPID勉強会in町田の開催をお手伝いしました
http://koyaman2.blogspot.jp/2013/07/sapidin.html
・WACATE2016冬 2日目 問題を捉えよう~自律の入り口へようこそ
SaPID Bootcampで学んだ受講者の方が自らセッションを企画し実施したものです。
http://wacate.jp/2016/winter/program.html
□SPINA3CH(スピナッチキューブ)自律改善メソッド(情報処理推進機構(IPA))
当時私が参画していた情報処理推進機構ソフトウェアエンジニアリングセンター(IPA/SEC)プロセス改善研究チームで開発した、SaPIDを開発・保守プロセスの改善に特化して進めやすくしたハイブリッドメソッドです。
日本独自のプロセスアセスメントモデルSPEAK-IPAが持つノウハウを「改善検討シート群」にまとめ、SaPIDの「STEP 5 改善策検討・決定」にプラグインしています。
2011年7月に当初版をリリース。その後、国内で実施した実証実験の結果を反映し、2013年3月に改訂版を発行しています。
ツールセット一式、教育用資料、解説書籍などがすべて無償で公開されており、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で利用が許諾されています。
・プロセス改善活動についての新たな手法とその適用のためのツール類を公開(2011.7.7)
https://www.ipa.go.jp/sec/softwareengineering/reports/20110707.html
・当事者の問題意識に基づくプロセス改善手法「SPINA3CH自律改善メソッド」の改訂(2013.3.26)
https://www.ipa.go.jp/sec/softwareengineering/reports/20130326_3.html
・SEC BOOKS プロセス改善ナビゲーションガイド~自律改善編~
https://www.ipa.go.jp/sec/publish/tn12-007.html
□SaPIDがISO/IEC TR 29110-3-4国際標準化へ
弊社で私が実践していたSaPIDがベースとなってSPINA3CHが生まれ、それがさらに小規模組織(VSE:Very Small Entities)向けソフトウェアプロセス(プロファイル)国際標準化活動(ISO/IEC29110's)に取り入れられ、2015.10にISO/IEC TR 29110-3-4:2015(国際標準技術報告書(Technical Report)として制定されました。
ISO/IEC TR 29110-3-4:2015
Systems and software engineering -- Lifecycle profiles for Very Small Entities (VSEs)
-- Part 3-4: Autonomy-based improvement method (自律に基づく手法)
<関連情報>
https://sec.ipa.go.jp/users/seminar/seminar_tokyo_20140219-02.pdf
https://sec.ipa.go.jp/users/seminar/seminar_tokyo_20160310-02.pdf